「功…?」


恐る恐る、功の目をみる。
そしてそっと頬に触れてみる。

すると功は優しく笑ってみせた。


もしかして…本当なの?


「そのうるうるした目で見るのも禁止。」


功はそう言う。


「功…!私も功が好き!
ずっとずっと、功が好き!」


「えっ。本当に言ってる?」


「うん!私、ずっと功が好き…きゃっ」



そう伝えようとしたら
また抱きすくめられて、身動きが取れなくなる。



「こ、功…く、苦しいよ……?
あ!でも、私とお付き合いしてください!」


その腕の中で私はそうつぶやく。

なんか…本当に夢みたい。

すると功は、


「うん。よろしく。」


耳元で
私にだけしか聞こえないように、囁いた。


もちろん周りは人で溢れていて私たちをまじまじとみる人もいるだろう。


でもそんなの御構い無し!



そう思ってたのもつかの間。



「梨乃。顔見て。」

白くて細い指で、顎をクイっと掴まれる。
ニヤリと口の端を上げる功。


何とも言えない、かっこよさ。


「うん。顔見たよ?……んっ」


突然キスを落とされ、
身動きが取れなくなる。


目の前に広がる目を閉じた功と、
そっと髪を撫でる優しい手。



それは長くて、息が続かなくなる。
少しずつ角度を変えて、キスをする。



「んっ、はぁ、はぁ、」



唇が離れて、息を整えるも、
功は息一つ乱れることなく



「梨乃…好き。」

なんて呟いてくれる。



ダイレクトにそれが伝わって、胸がいっぱいいっぱいになる。

功が好きって気持ちが、途絶えることなく溢れてくる。


「私の方が好きだもんね!」

私も負けじとそう答えた。



その様子を阿久津先輩が凄い形相で見ていたことを、私たちは知らない。