それからしばらくして、解散となった。

早苗と駅で別れてから、功はこんな事をいう。

「ね、梨乃。
もしかして、あいつの事好きになったの?」


「え?あいつって、阿久津先輩の事?」


「そ。で、どうなの?」


「好き…?良い人だとは思うけど。
どうして?」


どうしてこんなこと聞くのか、その意図が分からない。


「付き合っちゃえば?」


「…え?」


頭の中が一瞬で真っ白になる。
だって付き合いたいのは功だけなのに。


「今日見てても
すっげーお似合いだったよ、二人。」



功は歩きながらそう続ける。
抑揚のない、その声で。


そして少し冷たく、私を見る。


「…?」

お似合いになりたいのは、功だけなのに。



少し私を突き放すように聞こえたのは、気のせい?


「功…?」


気づけば頬に涙が伝う。
そんな事言って欲しくなかった。

功は私の事、女の子として見てくれてない。
そんな考えが頭をよぎって離れない。


「え、何?泣いてるの?」


功は簡単に私に触れようとする。
誤解させるような事して、
私を舞い上がらせるような事して、

結局は功の気まぐれなんだ。


「違うっ。もうあんま見ないで。」


パシッ
私はその手を振り払ってしまった。


「あっ…ご、ごめん…。」

思わずたじたじと謝る。
しまった…


叩いてしまったところが少し赤くなる。

そして功も、気まずそうに

「いや…僕もごめん。」

と、謝る。


しばらくの沈黙のあと、
功は目を合わせる事なく
くるりと向きを変え前へ進んでいってしまう…



特に話すわけでもなく、
沈黙が続き、後味悪くその日は終わってしまった。


どうしても功のあの声が、言葉が頭から離れない。

何を思って功はそんな事言ったんだろう。
私のことをよく知ってるはずなのに。