「ね、梨乃こっち向いて?」


私は言われるがままに従う。
その瞬間ふっと頬に柔らかいものが…


それが功の唇だと認識するのに、時間はかからなかった。


「功…?」


慌てて頬を手で覆う。
多分今、顔りんごだ!


そんな私を見て功は、余裕たっぷりに笑ってみせた。

どうしてこう、
ポーカーフェイスなんだろう。


能天気ということもあって、なかなか掴めない。

「ねえ、なんでこういう事するの?」


「嫌…だった?」


嫌なわけないじゃん。こんなにも功が…
好きなのに。

でも…



「功には好きな人いるでしょ?誤解されちゃうよ?」



私だって傷つきたくないんだ。


「…。梨乃?僕の好きな人、本当に分からないの?」


「え、私の知ってる人なの?」


クラスの人?それとも、部活の人?


「知ってるというか…ごめん、忘れて。」


せっかく教えてもらえると思ったのに、結局濁されてしまうんだ。


功のバカ!大バカもの!