「功!朝だよ、起きて起きて!」

私は功の部屋のカーテンを開ける。


「んーっ梨乃。眠たい…」



そんな猫なで声でいわれると、逆に起こすのが申し訳なくなるじゃん…



「んーもう!起きて!ほら!」

「分かった…梨乃おはよ。」



「うん。おはよう。
ご飯作っといたから、食べといてね。
あとは着替えできたら置いといて。
今日は時間に余裕があるから、洗濯してけそうなの。
それから…」


私は功の布団を整えながらそうお願いする。


次の瞬間…


スッと掴まれた腕。


気配でわかる。すぐ後ろにいる功。


私は、何事だと思い振り向く。




「功…?どうしたの?」


「…。」


功は何も話さない。


「功…?」

いつもとおかしい様子の功。
私は思わず顔を覗き込む。


やっぱり顔が整ってて…
ドキドキしてまともに顔も見れないはずなのに、功にぐっと引き込まれる自分がいる。



「やっと目見てくれた。」


「え?」


「今日起きてから、
一つも目合わせてくれないからさ。」


何それ。
今こうして掴まれてるのも、それが理由?
何それ可愛い。



「うーん。そうかな?」


「うん。そうだよ。」


「ごめんね。
梨乃さんは忙しくしてたから。」


「梨乃さんは忙しいね。じゃあハグして?」


え?
それは忙しい事と繋がらない気が…


「え、今?」

「うん。今。」


急にくる功のおねだり。
今?とか聞くけど、
本当は凄く嬉しかったりする。


功は掴んだまま私を引き寄せ、包み込んだ。


とても優しく。


鼻をかすめるシトラスの香り…
功の匂いはいつも健在。落ち着く。


功はやっぱり背が高い。
私と頭いくつ分違うんだろう。


だって
数ヶ月で3センチくらい伸びてるもんな。
羨ましい限りだ。ずるいヤツめ。

そんな事をうかうか考えて、
功の背中をぽんぽんとする。


このままの状態がずっと続けばいいのに。


そんな事を思ってしまうのだけど、やっぱり気恥ずかしかったりもする。


「さあ功!早く準備しちゃおうよ。
遅刻するの梨乃さんは嫌なんだぞ。」


学校を言い訳に、
私はそのドキドキから逃げてしまうんだ。


とってももどかしい。