濱田 早苗 side


あーイライラする。
いっつも、あの二人を見てイライラする。


あの二人。それは、高橋 功と 帳 梨乃。


中一の時の事だった。

梨乃とは服の趣味とか、好きな歌とか、色々共通するものがあって、いつしか親友と呼べる存在になっていた。


梨乃には幼馴染がいる。
それが高橋功で、功くんは梨乃の事が好きなんじゃないかって疑ってた。

梨乃を見る目だけは、他の子と違ったから。


でも、…


「うわー最悪だ。
あの担任絶対雑業したくないだけじゃん。」


そう不満たらたらでプリントを運んでいたところだった。


スッと横を通り過ぎた功くん。

そして、


「濱田さん、良かったら手伝おうか?」


そう声をかけてくれた。
誰も今までそんな風に気遣ってくれる人はいなかったから、純粋にとても嬉しかった。


その後二人で運びながら、小話をする。

その時にふと見える、功くんのさりげない優しさや、紳士な所。

そんなところにぐっと惹かれるものがあったんだと思う。


「手伝ってくれてありがとう。また明日ね。」


プリントを運び終えた私は、彼にそう言う。


「ん。また明日ね。」


そう言って功くんは、その綺麗な顔で私に笑ってみせた。


その瞬間、あー私、この人に恋に落ちたんだなって。幼ながらに感じた。


多分多くの女の子が、
その笑顔に落ちていったんじゃないのかな?


でも私は知ってた。功くんはどんな子に告白されても、全てに断ってること。

そして、梨乃の事が好きな事。


梨乃も、恐らく功の事が好きなんだろうなって気付いてた。


幼馴染。


その壁の厚さも十分知ってた。