翌朝
「功、起きてー!」
功はなかなか起きない。あれ、おかしいな。
肩を優しく揺すっても、全然起きないんだ。
功の布団を退けて、やっと目を覚ました。
「んー。梨乃、まだ眠たい。」
「うん。眠たそう。」
「梨乃、ハグして?」
「え、あ、うん。仕方ないなぁ。」
そう言ってベットに座ったまんまの功に優しくハグをする。
功の大きな体は、私をすっぽり覆ってしまう。
鼻をかすめるシトラスの香り。
私は功の胸に顔を埋めた。
功は私を抱きしめる力を強めた。
そして私は功の背中をトントンとして、
「功、今日も頑張ってね。」
そう言う。
「梨乃が可愛すぎてつらい。」
「え?じゃあ私は功がかっこよすぎてつらい。」
「ねえ梨乃、絶対阿久津先輩のとこ行っちゃダメだよ?」
「じゃあ功は早苗のとこ行っちゃダメだよ?」
「え?濱田さん?」
「だって昨日仲よさそうだったから。少し妬いたんだよ。私。」
「え、妬いたの。何それ可愛い。」
功が腕の力を強めた。
「ね、最近ずっと思ってたけど、功ってかなりの頻度で私の事可愛いって言うよね。」
「え、だって可愛いじゃん。梨乃は美人さんだよ。性格も可愛い。」
「功……照れるではないか。梨乃さんはそういうのに弱いんだぞ。」
「そうなの、梨乃さん?そんな梨乃さんも可愛いよ。」
「功のばか。もう嫌いだもんね。」
そう言って腕の力を強めた。
このまま窒息でもしてしまえ。
可愛いって言われるだけで、舞い上がってしまうこっちの気も知らないで。
「り、梨乃…苦しい。」
「ふはっごめんごめん。功、早く学校行こ!」
「やだ。もう少しこうしてたい。」
「私もだよ。でも時間だから。」
「梨乃がそういうなら仕方ないね。」
そういうと、功は残念そうに支度を始めた。