「早苗、ちょっと来て。」


そうトーンを落とした声で言って私の腕を引っ張る一真くん。


な、なんか……怒ってる?


連れてこられたのは空き教室。
そして、一真くんは足を止めて私を真っ直ぐに見つめた。


「ねえ、一真くん?様子……変だよ?」


「……。」


何にも喋らない一真くん。



「ねえってば……!」


「一回だけ…しか言わないから。」


「え?」


「早苗。好きだよ。」


そう言って一真くんは優しく私の頭を撫でた。

「っっ〜〜〜!!!」


これは……心臓に悪いよ……


「え、なんか反応してよ。寂しいじゃん。」


「えっあぁ、うん。
一真くんの破壊力が半端なくて……」


「はあ?何言ってんの?でも分かっただろ?
俺が早苗しか見てない事。」


「なっ!」

て、照れてしまうじゃないかー〜!



「そうやってすぐ照れるとこも、割と好きだったりする。
だけど、他の奴の前で、あんま見せんなよ?」

なんか……説教されてるんだけど……


でも、嬉しい。


「う、うん!一真くんありがとう!
私もね、大好きだよ!」



「……。ん。」


若干照れてる一真くんも、大好き。


「じゃあ早苗、俺の事好きなら、キスしてみせて?」


「っは?急に何言ってんの?
いくらなんでも、恥ずかしいよ……」


「ほら、はーやーく。」


すると一真くんは私にぐんと顔を近づけた。

後は私が……キスするだけ。

そんな風に急かされてる感覚。



「ほら早く。このまま離れてあげないよ?」



「か、一真くんの……意地悪。」


「何とでもいっとけば?」


「ひ、ひどい……。

じゃ、じゃあ……失礼します。」


そう言って、唇を近づける。
完全に、一真くんのペースに巻き込まれてる。


一真くんのキスは、何というか、あったかくて優しくて、とっても甘い。


唇の角度を少しずつ変えて、時に

「早苗……好きっ」


なんて言葉を漏らして……


その度に私の胸が飛び跳ねていく。


「っはぁ……一真くん…、」


唇を一度軽く舐めてから、それを離した一真くん。


その後の優しい笑顔にもう一度だけ、胸がキュンと掴まれる。


そして一真くんはもう一度だけ、
誰にも聞こえないように耳元で囁く。



「早苗……愛してる。」