「じゃ、俺行くわ。
功とゆっくり話しておいで。」



先輩も去った体育館裏。

私は功と向き合う。


でも、何を話したら良いのかわからない。



「梨乃……よく頑張ったね。
梨乃は優しいから、断るのも勇気いったでしょ?」



ぎゅっと抱きしめられて私も涙が溢れる。


私をちゃんと見てくれてて、欲しい言葉をくれる功。


「しばらく…っ…こうしてて良い?」



「分かった。ほら、よしよし。」



「…やっぱり功がいると落ち着くなぁ。」



「それは僕もかな。
と言うかさ、先輩に何頭さわられてんの?」


功は少しトーンを落とした声でそういう。

「えっ」


「隙がありすぎるんだよ。梨乃は。」


功はそう言って私のお腹をこしょこしょとする。


「きゃはははっ、くっ功っ、くすぐったい!
やめ、ふはっ」



「ようやく笑った…
やっぱり梨乃は笑ってた方が可愛いよ。」


ズキュン!
胸を撃ち抜かれるその音。今聞こえました。


「んもう!功!大好き!」


「じゃあさ、キスして良い?」



「えっ、ちょっと待って…てばっ
んんっ…」


功はいとも簡単に私の唇を奪い、
優しく髪を撫でる。



校舎と校舎の間から差すオレンジの夕日が
功の髪を明るく照らしてゆく。


唇が離れて息を整えようとする。


「ごめんな、梨乃を守れなくて。泣かせて。」


申し訳なさそうにする功。


「功が悪いわけじゃ無いでしょ?
でもそういうところ、好きだよ?」


すると功の頬はほんのりとピンクに染まった。