「うん!美味しい〜!」


帰りの新幹線で駅弁を頬張り、思わず笑みをこぼす。


「うん、美味しいね。
ねえ梨乃、本当に何にもない?さっきから空元気ですっげー気になるんだけど?」



「そ、そうかな?功の気のせいだよ。」


いや、功はやっぱりお見通し。大正解だよ。

だけど私は、無駄に元気に振る舞うんだ。



「ま、何かあったら、僕にすぐ言ってよ?」


「うんうん、ありがとう!
あ、そうだ!今度はさ、早苗と西田くんとダブルデートしようよ!」


「嫌。」


「え、何で?絶対楽しいよ。」


「えーやだな。
だって梨乃が他の男と出かけるんだよ?だったら僕と二人の方が良い。」


功は少し不機嫌に言った。



「他の男って…西田くんの事?」


「そうだけど?」


「西田くんは早苗にぞっこんなんだよ?
そんな心配する事ないでしょ…。
功もなにかと心配性だったりして…」


理由が…可愛い。


「それでも僕は嫌なの。
梨乃の心配性と一緒にしないでよ。
次元が違う。」


「何それ、ひどい…。じゃあ功は私とは次元の違う能天気さんだね。」


次元が違うってかなり傷つくんだけど…


「それさ、仕返しのつもり?」


「…そうだけど?」


「全然
仕返しになってない気がするんだけど。
梨乃って可愛いね。」


「はっ!?」


「ふはっ…真に受けすぎでしょ?」


「っ…こ、功が流れでもない事を急に言うからでしょ?
功のばーかっばー…ってちょっと…?」


功がどんどん近づいてくる。
ニヤリと悪い笑みを浮かべながら。

思わず体を横に倒す。
でも、
シートベルトしてるから…もう動けない…


「近いよ?……、んっ」

ふわっと降りて来た優しいけど長いキス。
頭を支えられ、そっと撫でられる。
動揺して動くも抵抗出来ない。


何度も重ね合わされるその唇はとても甘くて、私を満たすのに十分すぎるくらいで…


周りには少ししか人がいないから良かった。

それも後ろの方だから、座席からは見えない。

助かった。


「もう功!ダメだよ。そんな事しちゃ!」


「どうして?梨乃の口柔らかいね。」

功はそう言うと優しく笑った。
その笑顔…には敵わない。


ていうか口が柔らかいとか何とか……
これは天然なのか?それとも確信犯なのか?



「っ…はぁ〜!?功の変態。」


「僕って変態?
いや、梨乃が可愛いからでしょ?
こっちもかなり限界なのに、耐えてるんだよ?こっちの気持ちも分かってよね。」


「何が限界なの?じゃあ毎回ドキドキさせられるこっちの気持ちはどうなるの?
心臓破れたら慰謝料払ってもらうからね。」


「え、ドキドキしてるの?
それと、心臓は破れないと思う。」


マジレスで返されてしまった。
確かに、確かに心臓は破れませんけどね。



「そりゃそうでしょ?
功、あなたは
イケメンという類に入るのをご存知?
それに好きな人だから…その…余計にだよ。」



「…やっぱ無理…。もう…限界。」


功ははあーっとため息をつき、頭を抱える。


「な、何?大丈夫?」


「うん、一応…。」



そのあと私は功の肩に頬を預け、気づけばスヤスヤと眠ってしまった。