ホテルに荷物だけ置いて、私たちはアウトレットに向かう。


「ね、見て！このネックレス素敵！」


「本当だね。でも梨乃が作ってくれたネックレスの方が僕は好きだな。」


「まだ付けててくれたんだ！嬉しいなぁ、」


「ん、喜んでくれて何より。」



そうして私たちは巡回して行く。

そこで目に入った一人の男の人。


…お父さん。


でもその人は、私達のいるところから、どんどん離れていく。


もう二度と、会えないかもしれない…。


「功、ちょっとごめん、私お手洗い行ってくる。」


「ん、分かった。」



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「あの！」


ぜえはあ息を切らしながら、走ってその人に声をかける。


人間違いだったら恥ずかしい。
でもそれ以上の確信があった。


「…梨乃、かい？」


「やっぱり…お父さんだ。」


「さっきも見かけたんだよ。もしかしたら梨乃かもって…

隣にいた奴は…功くんだろ？」


「…うん。ここに住んでたんだね。
私はちょっとした旅行できてたの。

今も…あの人と暮らしてるの？
私たちよりも大切な…愛人さんと。」



どうしてこんな言い方しか出来ないんだろう。私はどうしようもなく醜い。



「いや、彼女とは別れたよ。数年前にね。
金目当ての女って気づくのが遅かったけどな。

梨乃は…功くんと付き合ってるのか？」



「う、うん。」


なんだ。別れてたんだ。この人は、バカな人だ。そんな女のために、私たち家族を捨てたのか。


「そうか…私が言えることはただ一つだ。
幸せになってほしい。」


「…。」

今更、親ヅラしないでよ。
お父さんから学ぶ教訓なんて…一つしかない。


「それと……
永遠の愛なんて、ただの綺麗事だ。
お前も、いつか突き放される。

たとえ、功くんみたいないい人でもな。


それを、覚えておけ。」


お父さんは、そう強く言い張り私を一度強い目で見る。


その目は鋭く私に刺さる。

そして、お父さんは人ごみの中に消えていった。


お父さんはなぜそんなことを、幸せを願うと言っておきながら、話したのだろう…


わたしにはそれがわからなかった。


「え？」


その人ごみは、私の疑問に満ちた言葉をも消し去っていく。


功は…違う。

そんなの分かり切った事なのに、なぜかズンと重く私の心にのしかかるその言葉。


永遠な愛…
ただの…綺麗事？

突き放されるなんて…絶対…嘘だよね？


「梨乃？梨乃！」


「えっ？」


息を切らして、こちらに向かってくる功。
探して…くれたの？


「やっと見つけた。遅かったから…。
どうしてここに？お手洗い、反対方向だけど…。」


「そうだっけ？私…」


言うべきだろうか、お父さんと話した事。


「どうしたの？」


「んーん、何でもない！
ほら、さっきのお店また見ようよ。」



「本当に…大丈夫？
ま、良いけどさ、、」


すると功は私をぎゅっと抱きしめた。


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その後のデートは、なんか憂鬱で楽しむことが出来なかった。


お父さん、何でそんなこと言うの？


本当に…私は捨てられちゃうの？