パーティー翌日からは私への誹謗中傷は少なくなり、一週間もすると、お助けBOXの本来の役目も戻り始めていた。
だが、小野田さんへの誹謗中傷が目立つようになっていた。そして鉄の男とまで呼ばれる様にまでなっていたのだ。そのきっかけは頻繁に出す移動の辞令だった。

小野田さんは菱野専務を主に今まで私達が集めた情報や社員の家族構成を参考に国内支社の大々的な移動辞令をだしたのだ。勿論、彼らのアビリティを査定することは忘れていない。仕事の出来る人間は更に能力を伸ばせる場へと移動させた。

『営業の水野が長野支店へ移動になったらしいぞ?』
『役職がついてもなぁ?ド田舎は嫌だぞな!?』
『しかし、病弱の子供抱えて大変なのに、酷いことするよな?』

水野さんのお子さんが喘息が酷く、大変なのは事実だった。だからこそ、小野田さんは空気の良い長野支店へ移動させたのだ。水野さんの実家は長野で、水野さんは年老いた母親一人を離れた田舎に残していることを気にしていたらしい。だから喜んで移動をしたのだ。水野さんからは、ボスを恨むどころか、感謝の言葉さえ贈られた。

『権力をかざし人を人と思わない冷たい男だよな?

『ここが持ち直さなくても、多少の実績をつくってあっちに帰るんだろ!』
『後どうなろうともあの男には関係無いんだろ?もともと切り捨てに来たんだから?』

酷い言われようだ…
誰も小野田さんの真の姿を知らない。
食事する間も、寝る間を惜しんで仕事してることも
社員の事だけじゃなく、その家族の事まで考えてることを誰も知らない。

鉄の男の胸の内を誰も知らない。

質の良いものを残すことは、日本の為、未来の子供達の為
、そう言って、新たな取引先が決まれば、自ら相手の事を調べ資金繰りの苦しい相手には、より良い取引条件を提示する。

この人は鉄の男なんかじゃない!

「ボス、箕酒造の社長様から連絡がありました。『宜しくお願いします』とのことです」

「分かった。後は何時ものように頼む!」

「畏まりました」

誰も知らなくても
私だけは知ってる。
本当は誰より淋しがりやで
苦しさも悲しさも知ってることを…
誰よりも温もりのある優しい人だと…

今日からボスは中国、タイと回って、アメリカ本社へと報告を兼ねた会議へと向かう。その為、2週間程、社を留守にする。

「ボスチケットです!お気をつけて!」

「あぁ、行ってくる」

小野田さんを空港へ送った帰り、私はそのまま治療を受ける為に病院へと向かった。