腕を組み、慧一は冷静に分析する。未優がこのレベルに達するまでには、あと二三年といったところだろうか。

(ギリギリだな……)

彼女が猫山の当主の座に就かなければならない、二十歳(ハタチ)まで。

未優が“歌姫”になることを泰造(たいぞう)が許したのも、すべて慧一が提示した条件──娼婦にはならないこと、自分が未優の側についていること。
そして、“歌姫”でいるのは満20歳までの期間限定であること───の三つによって、果たせたのだから。

その時、隣で“舞台”を見ていた留加が、息をのんだのが分かった。

(彼女、か……)

銀髪の少女が去ったのち現れた“歌姫”は、白金の髪を腰下まで伸ばしていた。

遠目から見てもわかる、整った目鼻立ち。女性らしい丸みを帯びた身体の線が(なま)めかしく、褐色の肌がエキゾチックで、さらに妖艶な印象を与える。

(二十四五といったところか。おそらく、ここで『女王』の座に近いのは、彼女だろう)

ヴィオラの音色と共に語りだした美しき“歌姫”は、癖のない白金の髪を宙に散らし、踊る。
歌声は情熱的で、時折ハスキーなそれに変わった。感情のこめ方が抜群にうまく、聴く者の心を揺さ振る響きをもっている。

『踊って、踊って……死ぬまで踊るわ。誰も私を止められない』