「ここに……この胸に、幸福な気持ちを味わわせてくれたのは、今夜の『人魚姫』の彼女、未優さんだ。
彼女の歌声は、実にいい。悲劇を悲劇で終わらせず、観る者に希望を与える。それは……とても素晴らしい才能だよ。
“第三劇場”にだけ縛られるのは、もったいない。ぜひ『女王』になって、各地の“劇場”を回って欲しいものだ。
そのために、及ばずながら私も尽力しよう。大会への推薦状を、書かせてもらいたい」

『狼族』の“舞台”への発言力は、絶大だ。その“純血種”ともなれば、さらに影響も大きい。

慧一は、丁重に申し出を受け入れた───。