シェリーの言う通りだった。

一人一人が競い合い、高め合って、より良い“舞台”を創りあげていく。
その過程は楽しんだとしても、本番の“舞台”では自分でなく観客を楽しませなくてはいけないはずだ。

───プロの、“歌姫”として。

「だからあたしは、今日の綾さんの“舞台”よりも、もっと良いものをお客さんに届けたいって、思った。
それで、部屋に戻って来てから急に練習したくなって……」

テーブルの上に置いた“演譜”を指でなぞる。留加と一緒に少しずつ積み重ねてきた結果が、ここに表れている。

「あたし……本当に、“歌姫”として“舞台”に立てて良かったって、思うの。
留加と音を合わせて、“解釈”を議論して、また歌って、語って……踊って。その繰り返しが、とても楽しくて、仕方がないんだ。
緊張も、するよ? 技術だって、まだまだだって、思う。
だけど───だからっ……!」

ふいに、涙がこぼれた。“演譜”の上に落ちたそれが、染みをつくる。

「あたし……“歌姫”でいたい! ずっと、これから先も……留加と一緒に、やっていきたいよ……!」

明日の“連鎖舞台”で、“女王選出大会”の出場者が決まる。

仮に、未優が“第三劇場”の代表者として選ばれたとしても、『女王』になれるとは限らない。いや、その可能性は極めて低いだろう。