しかし、見つけたバラの色は白。
《彼女》は、自分の身を犠牲にし白バラを赤く染め、彼の手に渡らせる。

『我が愛しの君。この深紅のバラを、あなたに捧げます。どうぞ、受け取ってください』

第一幕から第三幕は、主人公・ナイチンゲールの美声を、まさしく「歌」で伝えようとし、『声優』三人が魅惑の歌声と、悲劇を予感させる音楽とで物語をつづった。

そして、綾の演じる終幕は一変して、よどみない語りと優美な動きでナイチンゲールの最期と、悲劇とを彩った。

『なんということだ。ようやく見つけたこの一輪のバラの花も、あなたは受け取ってくださらないのですね』

青年の嘆きの語りから、深紅のバラの花に宿ったナイチンゲールの魂へと、綾は、無駄のない動きと歌声で、表していく。

高音で奏でられる嘆きの旋律は青年の声をヴァイオリンが、ナイチンゲールの想いを綾が歌い、そうして幕は閉じられた……。