「あなたがおっしゃっていた《とても大切で愛しい人》というのも秘密ですか?」
「……立ち聞き? シローがそんな悪趣味だったなんて、意外だわ」
「そうですか? 《オレ》がけっこう悪趣味だってこと、あなたなら、とっくにご存じかと思ってましたよ」

シェリーは噴きだした。片手で白金の髪を払う。

「シローのは、悪趣味じゃなくて……イジワル、でしょ?」
「ちょっとした、意趣返しですよ」

今度こそシェリーは声にだして笑った。いったい、何年前の話を蒸し返しているのだ───。

「根にもつタイプだったわけね。よく解ったわ」
「そう、しつこいんですよ、オレはね」

瞬間、シェリーは腰をひかれ、唇を奪われていた。
深く強く求めるその唇に応えながら、シェリーは清史朗の片耳に触れる。

いつもは褐色のくせ髪に隠れている“ピアス”が現れた。十字型の金色───『狼族』の“純血種”の証。

「……『狼』の“純血種”が、本気で“異種族間子”を相手にするはずがない。馬鹿にされたんだって、思ったわ」
「そうして、十七の純情少年を、むげにふってくれたわけですか。
……あなたは、ご自分の魅力をよく解ってらっしゃらないようだ」