演目は、ふたりがそれぞれに得意だと思われるもので競ってもらうわ。お互い似た傾向のもので───」
「ちょっと待ってください!」

未優はそこで、ようやく口をはさむ。書面を淡々と読みあげていた涼子が、口を閉ざし未優を見た。

……意味が、解らなかった。

「あの、あたしは確かに『女王』をめざしています。だけど、なんで今……しかも、あたし、なんですか?
『女王』って、全国にただ一人しかいなんですよね? ってコトは、それだけ実力も求められるはずなのに……。
なんで、シェリーさんと綾さんじゃなくて、あたしと綾さん、なんですか?」
「シェリーは『女王』の座に興味はないらしいの。あなたの言う通り、順当に考えれば、『王女』ふたりで当“劇場”の代表者を決めたはずだけど、シェリーにその意志がないのに無理強いはできないわ」
「でも……!」
「───ガタガタ細かいことにこだわる子だね! 別に、あんたにその気がないってのなら、他の“地位”に声かけるまでさ。
いいかい? これはあんたに与えられたチャンスなんだよ? 『女王』になる気があんのなら、受けてしかるべきだろ。
ようするに、あんたにゃ『女王』になる気構えも、自分に対する自信も、ないってことだね。がっかりだ」

ばさりとハチミツ色の髪をはらって、響子は横を向く。