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「あんた、『女王』を決める大会に、出る気はあるかい?」
「……はい?」

“連鎖舞台”を二度、平日の“舞台”を一度踏んだばかりのある日。
支配人室に呼びだされた未優は藪から棒にそんなことを言われた。

例によってくわえタバコの響子は、明日の天気でも訊いてくるかのような気軽な口調で、その実、とんでもないことを尋ねてくれた。

未優を呼びだしに来た薫が、ふふっと笑った。

「“女王選出大会”、だよ。長いよね。略してQ.S.T.とでも呼んでおく?」
「略さなくていいし、名称なんざどうだっていいんだよ。ぼ……薫は仕事!」
「───ウィ、マダム。じゃ、未優、演目が決まったら教えてねー」

出てけ、と、手で示され、薫はかしこまって響子に一礼すると、未優にひらひらと手を振りながら出て行った。
あとには、それを冷めた目で見ていた慧一と、笑いをこらえている涼子とが残っている。

響子は灰皿でタバコを()み消した。未優を見て問う。

「何度も言わせなさんな。『女王』になる気はあんのかい?」
「えっと……はい、あります!」

大きくうなずいてみせる未優に響子は無言で涼子をうながした。

「大会は、来年の一月末に行われるわ。一応、頭に入れておいてね。
でも、その前に、あなたと綾、どちらを“第三劇場”で推すかを“連鎖舞台”で決めさせてもらうから、そのつもりでね。