「……大丈夫だ。すぐに、出て行く。君に確認したいことがあるだけだから」

未優の胸中を察したように留加が言った。『山猫』は首を傾げて、留加を見上げる。

『なぁに?』
「───君は、『女王』をめざす気は、あるのか?」

留加からの問いの答えは、今日未優が決意したばかりのことだった。

『うん。めざすつもりだよ。頑張って、『女王』になる』
「……そうか」

うなずき返した留加の表情がやわらかく、未優は不思議な気持ちに包まれた。

「君のその答えが聞きたかった。……ありがとう」

言って留加は立ち上がり、部屋の外へ出て行こうとする。未優はあわてて彼を止めた。

『待って、留加! もうちょっと、一緒にいてくれないかな……?』

うろうろとその場で足踏みをする『山猫』の姿に、留加が失笑した。

(留加がこんな風に笑うの、初めて見た……!)

驚く未優の前で、留加が言った。

「……毛布を持ってこよう。君は、寒そうだ」

言われて初めて、震えている自分に、未優は気づいた。

エアコンをつければ良いのかも知れないが、獣の身には、あの温風は居心地が悪いのだ。
留加は手にした毛布で獣姿の未優をくるみ、ひざ上で抱えた。

未優はその体勢に、動揺を隠しきれなくなる。

『あああのね、留加。
えっと、さっきはあたし、いろいろ変なコト言って、留加に迷惑かけたよね、ごめん!』