「……解った」

静かにうなずく留加を見届け、響子は苦笑する。手にしたタバコに火をつけて、吸いこんだ。

「……酷なことを言っちまって、すまないねぇ。
一年以上も好きな女の側にいて手を出すな、なんて、誰にでも言えるもんじゃない。お前さんだから、言ったんだ。
だから、もう二度と、あの子の“奏者”を辞めるだなんて、言わないでおくれよ? 今夜のことは、アタシも聞かなかったことにするからさ」

留加は深々と頭を下げた。
響子は微笑んで、そんな彼を見ていた。