「私は“異種族間子”で生まれてからずっと、人間(ひと)扱いされないことの方が多かった。
だから、《ああいう目に》遭わされたんだってことも、否定できない。
だけどそれは、不幸なことかしら?」

押し黙ってしまった留加の両腕をつかんで、シェリーは彼を見上げた。

他人(ひと)からすれば、確かに不幸だと思うかもしれない。
でも、幸せか不幸せかは、他人が決めることじゃない。私が決めることよ。
自分が幸せか不幸かは、人それぞれの心の持ちようで、いくらでも変わるの。
私は今“歌姫”をして、好きな踊りを踊って、収入を得られてる。同僚にも恵まれているわ。
……とても大切で、愛しい人もいる」

驚いたように見返してくる留加に、シェリーはいたずらっぽく笑ってみせた。

「あら、意外だった? 私だって恋くらいするわ。許されないことではないもの。
そして、ねぇ、留加。私は、あなたに再会できた。それは、とても幸運なことだと思うわ。
……ねぇ、留加? 私はこんなに幸せよ? だからあなたも……幸せになりなさい?」

ゆっくりと、シェリーは留加を抱きしめる。

見下ろしていた男の子は、今はもう、こんなに大きくなってしまって。腕を回すのが、やっとだ。

それなのに、その魂が、あの頃と少しも変わらない気がするのがなんだか無性にせつなかった。