「……あの子を憐れんだ嬢ちゃんを、偽善者だとは、わしは思わん。
たとえ何をしてやれなくとも、人が人を憐れむことが……情を寄せることができんようになったら、この世は真っ暗闇じゃからな。
嬢ちゃんは“歌姫”じゃ。人の心を推し量ることのできる、な。ならばそれは、“舞台”で表現してしかるべきじゃろう。
───もう一度言うぞ。自分のできることを、しなさい」

未優は大きく息を吸って、吐いた。そして答える。

「……はい」

勝は満足そうに微笑んで、それから思いだしたように首をかしげた。

「そうじゃ、嬢ちゃんの相談というのは、別の話だったんじゃないのかのう?
ケイト嬢ちゃんのことは、ここで会ったからじゃろ?」

……未優は、ここに来た目的をすっかり忘れていた。