「“歌姫”が娼婦であることの意味。
前は、みんなが“舞台”にだけ専念できればいいのにって、思ってた。
でも、さゆりさんみたいに“歌姫”の娼婦である側面を肯定的に受けとめてる人もいて、誇りに思っている人もいるって知って、あたしのなかで少し感じ方が変わってきてたの。
だけど……さっきのケイトの話を聞いちゃうと、やっぱり、イヤイヤ自分の身体を売らなきゃならない子もいる訳だし。
“歌姫”になったからって、自動的に娼婦にならなきゃいけないのは、おかしいと思う」

勝はふっと笑った。茶をすする。

「……ふむ。おかしい、か」

未優は、大きくうなずいた。
人が、自分の望むべき有様でいられないのは、どう考えても、納得がいかない。

「のう、嬢ちゃん。お前さんは『禁忌』で、だから客をとらない。
そして、そのことによって恋愛も禁じられておるな。それは、おかしいとは思わんか?」
「……正直、思いました。
だけど……“歌姫”としてやっていくなら、それに従わざるをえないのかもって、自分を納得させて……」

響子にクギをさされた時に感じたこと。
例えイヤだと思っても、それが『禁忌』であるというのなら、受け入れない訳にはいかない。