こくん、と、素直にうなずく留加の指先をつかんで、少女は息を吹きかける。驚いて見返す留加に、少女はふたたび笑った。

「指が動かなかったら、ヴァイオリン、弾けないでしょ?」

もっともだ、と思って、留加はまたうなずいた。
こちらに目線を合わすように、腰をかがめた少女の、伏せられた長いまつ毛を見ながら訊く。

「お姉さんの、名前は?」
「───シェリーよ」

言って向けられた艶やかな笑みは、父親が育てていた真紅のバラの花を、留加に思いださせた。