「なによ~、謝んないでよぉ。『禁忌』相手にまさしくタブーなこと言ったの、あたしなんだから!
ついノリで話しちゃって……。これからは気をつけるね? ホント、ごめん」

心配そうに、藍色の瞳がこちらを見ている。

未優は急に、申し訳ない気分になった。薫が言っていた今の『禁忌』の現状を思いだしたからだ。

(性的な心的外傷(トラウマ)を負ってるって、思われてるんだ……)

だから「娼婦」にはなれない。その方が、確かに周囲は納得できるだろう。
少なくとも「“純血種”だから」という理由よりは。

(あたしずっと、こうやってみんなをだまして“歌姫”をやっていくのかな……)

そう思うと、未優の心は沈んだ。
“舞台”で実力を示しても、まだ満たされない想いが残るとは。

「未優、やっぱ顔色悪いね。(まさる)おじいちゃんのとこ、行く?」
「あんた買いだし当番でしょ。もう行った方がいいんじゃない?夕方のタイムセール始まっちゃうよ。
この子はあたしが医務室に連れて行っとくから」
「えー? うーん……ごめん、未優。さゆりさんにあと任せちゃうね? じゃ、さゆりさん、お願いねー」

なおも心残りな表情を見せながらも、愛美は去って行った。