それより本番に向けて、もっと密度の濃い練習をしよう」

留加の思考はすでに、目前に迫った“連鎖舞台”へと移っているようだった。

(今のって、あたしのコト褒めてくれてたのかな……?)

あまりにも淡々と言われて気づきにくかったが、おそらくそうだろう。
未優はふたたび、気持ちが上向きになっていくのを感じた。

「……ね、留加。久々に、外で合わせない?」

突然の提案に留加は面食らったようだが、すぐにうなずいてくれた。

二人して、“第三劇場”の中庭へと足を運ぶ。

陽ざしは秋のそれから冬のそれに変わっており、時折吹く風は、冷たかった。
しかし、防音室で音を積み重ねていく段階は過ぎていたため、開放された空間で少し動きを伴ってみたかった未優としては、ちょうど良かった。

「───始めようか」

留加と試行錯誤した結果、『ラプンツェル』の第二幕にふさわしい楽曲は、メンデルスゾーンの『歌の翼に』だろうということになった。

清らかな旋律のなかに、心のうちにある憧れのようなものの訪れを、期待させる曲だ。

未優は歌った。
通りがかった王子の心を動かす、力のある歌声で───。

(あぁ、やっぱり、気持ちいいな)

留加の奏でるヴァイオリンの音色で、よりいっそう自分の中にある想いが、解き放たれていくのが分かった。