可能かどうかなどと言っている場合ではない。“歌姫”としてやっていくのなら《示さなければならない》のだ。

未優は立ち上がった。

確かに始まりは「趣味」だったかもしれない。けれども、今は───。

(これが、あたしの「誇り」なんだ)

前を見据える。

口で何を言っても無駄だ。
“歌姫”としての証明は、自らの歌と踊りと語りで表現しなければならないのだから……。

とんっ…と、未優は軽く跳躍した。
羽根でも生えているかのように未優は高く遠くへ飛べる。
滞空時間の長い飛翔は特技と言っても良いが、それだけでは、ただ跳躍力を誇示するだけで終わってしまう。

(さっきの綾さんの動き、キレイだった)

おそらくは、舞いの型の一つだろうと思われるが。

(水の流れ、を、表現しているのかな……)

頭に思い浮かべながら、未優はそれを、飛翔時の動きに取り入れようと考える。

繰り返し、思い描いては跳躍しまた繰り返す。自分のものとなるまで、幾度も、幾度も。

†††††

“演譜”を片手に、未優は大あくびをする。

結局、明け方近くまでトレーニングルームで過ごしてしまった。
洗濯当番だったため、いくらも寝ずに起きて当番をこなし、昼前の今は、誰もいない談話室で『ラプンツェル』の“解釈”を考えていた。

「……寝てないの? 大きなあくびだったね。
まさかとは思うけど、もう留加と、ヤっちゃったりした?」