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ピッと手元のリモコンを操作し老医師はコホンと咳払いした。

「……で、どうしたんじゃ、未優嬢ちゃん」
「留加が……留加が、すごく苦しそうなの! ねぇ、男の人の“変身”って、あんなに苦しんでいいの!? おじいちゃん、ちょっと来て、()てあげてよ!」

落ち着けずに体を揺さ振って言う未優に、(まさる)は眉を上げた。

「ほう。苦しんどるのか」
「ほう、なんて感心してないで、早くあたしと一緒に来てってば!」
「……落ち着きなさい、未優。それが本当に“変身”によるものなら、わしにはどうにもならん。
“変身”は、病気ではない。ただの、生理現象じゃからな」

真面目な口振りに、未優は首を振って言い募る。

「確かに……それは、そうだけど……でも、留加の苦しみ方は、尋常じゃないんだもん……!」
「だから、どうにもならんのじゃ。
考えられることは、ただひとつ。留加は、己が獣であることを拒んでいるんじゃ。本人が“変身”を望まないことには、わしにもどうにもならん。
……おそらく、ずっとそうやって、留加は“変身日”を迎えてきたんじゃろうな」
「そんなっ……! それじゃ、このまま留加が苦しんでいるのを、黙って見過ごせっていうんですか!?」

責める未優に、勝はシワの刻まれた顔をさらにくしゃっとさせて笑った。