2.

(どうしよう……)

壁の向こうからは、今も時折、バタンとかドシンといった、大きな物音が聞こえてきている。
留加が身もだえていることが、容易に想像がついた。

(男の人の“変身”って、あんなに苦しむものなの……!?)

女の自分のそれと、違うということは聞いている。だが、具体的にどのように違うのかは解らなかった。

慧一(けいいち)に訊くことも考えたが「放っておけ」と言われるような気もしたし、第一、今の時間は接待係として接客中だろう。

(かおる)……も、なんか留加とは合わないし……)

次々とこの場にふさわしい人物を思い描こうとした未優の頭のなかで、一人の人物が浮かび上がった。

(ヒヒジジイ! ……じゃなくて、獅子堂(ししどう)のおじいちゃん!)

未優は思い立ってすぐ、医務室へと向かった。

以前、“ピアス”の交換をしてくれた時に、“変身”について相談にのってくれるようなことを言っていた。

(それに、曲がりなりしも、お医者さんだもんね! 留加のあの状態を見たら、きっとどうにかしてくれるはず!)

そう思いながら、未優は医務室の扉を叩く。
中から、
「今イイとこなんじゃ~。あとにしてくれんか~」
という、のんきな声が返ってきた。

未優はムッとして扉を開け、中へ入った。
とたん、女性の悩ましげな声が聞こえ、未優の怒りが沸点に達した。

「エロビデオなんか後回しにしてあたしの話を聞けってのよ、ヒヒジジイッ!」