突然、割って入った声に、未優はびっくりしてそちらを振り返る。扉を押さえた薫が、うろんな目つきでこちらを見ていた。

留加が短く息をつく。

「……女性の部屋に、断りもなく入るのは、どうかと思うが?」
「えー? そんなことより、留加の方こそ未優の部屋と続き部屋ってどうなの?
年頃の男女が自由に行き来できる、この状況」
「……確かに防音室でつながってはいるが、お互いの部屋で施錠できるんだから、プライバシーは保たれるだろう」
「未優はウッカリ屋さんな気がして、僕、心配なんだよね。防音室側の鍵、かけ忘れてそうで。
現に、今だって部屋の鍵すら開いていたし」
「……君は、おれが彼女に、何かするとでも思っているのか?」

多分に怒りを含んだ留加の物言いに、薫はさも当然といわんばかりにうなずいた。

「そりゃあね。留加だって(オス)だし、未優はこんっなに、可愛いんだから」
「───あいにくだが、おれにそんな気はない。妙な言いがかりは、やめてもらおうか」
「そうだよ、薫、なに言ってるの? 留加に失礼だよ?
……そんなことより、お昼ご飯食べようよ。お腹すいてきちゃった」

留加と薫の話の成り行きに、未優のなかにあった、さきほどまでの甘い気持ちが、急激にしぼんでいく。