「あっ……はい!
そうですよね? 心がけます」

改めて気づかされ、未優はシェリーに同意する。そういえば、留加と音楽以外のことを話した記憶が、あまりない。

(うん、留加といろいろ話してみよう)

そんな想いにとらわれている未優を、シェリーは穏やかな眼差しで見つめていた……。

†††††

「お前は本当に異“種族”───特にイヌ科系が好きなんだな」

あきれたように溜息をつき、慧一は未優が持参したサンドイッチを手に取る。何も言わずに食べているところをみると、味は合格点といって良いだろう。
未優は昼食用に作ったそれを留加と一緒に食べる前に、慧一に味見させていた。

「そう言われてみると、そうだよねー。『狐』に『犬』に『狼』に……『狐』と『犬』の“異種族間子”」

指を折りながら、好意を寄せた人物を数える未優に、慧一が言った。

「それに、“異種族間子”にその特徴に関することを言うのは、差別発言だととられても仕方のないことだ。『王女』が寛大な心の持ち主で良かったな」
「えっ。やっぱり、そう?
わーん、あたし、やっちゃったんだ~。どうしよう? もっとちゃんと、謝った方がいいの?」
「馬鹿を言え。蒸し返したりなんかしたら、余計に失礼にあたるだろう。
少しは考えろ。その軽い脳ミソにしわが刻めるのは、若いうちだけなんだからな」