未優はシェリーの隣に座りこみ、彼女の横顔を盗み見た。綺麗な顔立ちというだけなら、こんなに自分が気になることも、ないだろう。
きっと───。

「……私の耳が、気になるの?」
「あ、えっと……はい。あの、失礼かもしれませんが、可愛いなって、思って……」

その言葉が、シェリーの記憶のなかの少年の声と、重なる。

『お姉さんの耳、かわいいと思って……』

「ああああのっ、あたし、メチャ失礼でしたかっ!? 気を悪くされたら、すみませんッ!」

押し黙ってしまったシェリーに、未優はあわてて謝った。

失敗した。
思っていることをすぐに口にだすのは、お前の悪い癖だと慧一に言われていたのを思いだす。
しかし、未優の後悔に反して、シェリーは花が開くようにふわっと笑ってみせた。

「いいえ。可愛いって言ってもらえて嬉しいわ。私もこの耳、自分のチャームポイントだと思っているから」
(うわーっ……)

未優は思わず、感嘆の息をついた。シェリーの微笑みは自分に対する自信で満ちあふれ、彼女を輝かせて見せたからだ。

「あのっ、あたし、シェリーさんのこと、好きですっ」

突然、未優の口から、そんな言葉が飛びだす。
シェリーは目をしばたたかせたが、すぐに噴きだした。

「……ありがとう、未優。私も、あなたみたいに素直な子、好きよ」