「は? あんた練習したいの? マジで?
……まぁどうでもいいけどさ……。あぁ、そっか。『禁忌』だもんね。『夜』稼げなきゃ、“舞台”に立つしかないのか」

(……論理が逆な気がするんだけど……)

肩をすくめるさゆりに、内心、未優は突っ込んでしまう。さゆりの言い方だと、本職が「娼婦」のように聞こえるからだ。

「週に一度、響子さんが全員集めてチェックする以外は、基本的に出入り自由。
ただし、先に使ってる人がいたら、一緒に練習していいか訊くのが、ここのルールね。ようは、仲が悪い者同士は一緒にやらないってコトだけど」
「仲が良くない人たちって、いるんですか?」

思わず訊き返すと、さゆりは鼻で笑った。

「そりゃあいるでしょう。
女が13人……あんたが入ったから14人か。それだけいれば、合わない人間もいるし、「あの“種族”キライ~」とかいうのもあるじゃん。
あんただって、そうでしょ?」
「え? あの……特には」
「ふーん。あんた、変わってるね。
……じゃ、あたしはこれで。昨日のお客さん、しつこくて、なかなか寝かせてくんなかったんだよねー……」

ふわぁーあ、と大きなあくびをして、さゆりが去って行く。未優はあっけにとられ、そんな彼女を見送った。

(……さゆりさんは“歌姫”を、イヤイヤやっている人なのかなー?)