「まだ右手に麻痺が残っていて、来週退院はできるみたいだけど、お店に立つのはまだ先になりそうです」

「そうか」

澤井さんは、軽く息を吐きグラスに入ったミネラルウォーターを飲み干すと言った。

「日本でも一番と言われている脳神経外科を知ってるんだけど、一度そちらで診てもらったらどうだろう」

「そんないいお医者様を知ってるんですか?」

「うん、父の友人でうちと古い付き合いがあるんだ。よかったら聞いておくよ」

「ありがとうございます!実は父は右手の麻痺が治らないことでかなり落ち込んでいて。お店のこともあるし、一日も早く復帰させてあげたいんです」

「わかった。なるべく早く診てもらえるよう連絡入れておく」

「ありがとうございます」

優しく微笑む彼の目を見つめて頷いた。

「店の方はどう?」

澤井さんは最後の一口を頬ばる。

「とりあえず、おはぎと和三盆ロール、抹茶プリンで少しの収益を得ていますがまだまだです。完売の日はなくて」

私は肩を落として首を横に振った。

「まぁ、そんなもんだろう。真琴は店を任されたのは初めてなんだし、よくここまでやってると思う」

そう言ってもらえるだけで、自信のない自分に少し勇気が湧くようだった。

「これから店はどうするの?」

澤井さんが尋ねた。