翌日、早速父の元に山川さんと向かい、今後の予定と今取り急ぎすべきことを確認する。

店に戻った後、山川さんが作ってくれていたお得意業者の連絡先リストを確認しながら、父がしばらく不在のため原料の一部の発注をストップする旨を連絡していく。

当面二人で店に出す予定のおはぎ、抹茶プリン、和三盆ロールの原料については、事情を話して普段の半分の量を発注することに決めた。

業者の担当者は皆優しい人ばかりで快く店の勝手を受け入れてくれ、父を気遣ってくれた。

父がどれほど皆に信頼されているのかが電話をかけるたびに伝わってくる。普段はぶっきらぼうで不器用な父だけど、一人で店をしっかりと守ってくれていたんだ。

温かい言葉をかけられるたびに胸が熱くなった。

抹茶プリンには欠かせない父の拘りの抹茶も、しばらくは量を減らして発注をかけることにする。慣れない私一人では作れる数も限られているから。

抹茶を卸している『京抹茶』に電話をかけた。父がようやく探し当てたというこだわりの抹茶を作る老舗業者だけに少し緊張する。

事情を話すと、他の業者と明らかに対応が違っていた。

父を心配する前に、店が今後も経営していけるのかということをしつこく聞かれる。おまけにずっと菓子を作っていないような私にうちの抹茶でまともな菓子が作れるのか?と厳しい口調で言われた。

一瞬、ムッとしたけれど相手も商売だ。この先、うちと取引をしていて不安な気持ちもわかる。

京抹茶との電話が終わった後、どっと疲れが押し寄せてデスクの上につっぷした。

今までにない経験にショックを受けていた。まさか父ではないというだけでこんなにも冷たく扱われるなんて。