それにしても、父への罪滅ぼしと何か役に立ちたい一心で店の切り盛りを自分が引き受けるなんて言ってしまったけれど、本当に私に勤まるのか今更ながら心配になってきた。

店の帳簿や、請求書や納品書、発注書を広げてみる。

何から始めればいいのか父に教えてもらわないと全くわからない。

山川さんから、明日はお得意先や原料の発注先には父の状況を知らせて今後の対応を相談しないといけない、と言われていたけれど、考えただけで頭がパニックになる。

父の仕事は私にとっては未知の世界。

未知の世界は恋愛と似ている。そこに行き着くまでは不安だけれど一旦飛び込めば目の前の世界が明るく開ける。飛び込んでよかったって心から思える。

ここまで来たら自分はやれると信じてやるしかないよね。大好きな父のために。

私は「よし」と気合を入れると、両膝を叩いて立ち上がった。

父に確認しなければならない書類を紙袋に詰め、手帳に確認事項を箇条書きにする。明日、父の調子が良かったら聞かなくちゃ。

お母さん、見ていてね。今まで父に頼りっぱなしだった私にだってちゃんと出来るんだってこと。


この三日間、あまりにも自分の周りが激変した。

澤井さんとのこと、父とのこと。

自分の周りの変化は自分の中にも変化を及ぼす。

人は節目ごとに成長していくというけれど、今がまさにその節目なのかもしれない。

もちろんいい変化をすることが前提だけどね。

久しぶりに自分の布団を押し入れから出し、自分の部屋に寝た。

明日の朝が、今日よりもいい1日の始まりになりますように。

澤井さんと父と私の愛する友人達の幸せを祈りながら目を閉じた。