久しぶりの家はなんだか私の知らない家のように感じる。

ほんの一ヶ月ほどしか出ていないのに、その家具の配置も匂いも違和感があった。

もうここには帰っちゃいけないと言われているようで少し悲しくなる。

スマホを開けると、何件かLINEが入っていた。

相原さんがかなり心配してくれていたので、すぐにこちらは大丈夫だと返信する。

あと、亜紀も昨晩泊めてあげれなかったことを気にして連絡をくれていた。

皆優しい。私は友人には本当に恵まれていると思う。これまで母がいなくても、誰かしら親身に相談に乗ってくれ、何かあれば助けてくれるありがたい存在。

そして・・・・・・。


澤井さんから今朝、何回も入っている着信履歴を見つめながらしばらく考える。

本当はすぐにでも連絡したいけど、こんな状況ではまだ私の気持ちもきちんと整理できていないし、父の状態を話したらきっとどんなに忙しくても私を優先にしてくれるのがわかっていた。これ以上彼には迷惑かけられない。

とにかく心配している彼に、今私が大丈夫だということだけは伝えておかなくちゃ。

【急に澤井さんの元から飛び出してごめんなさい。私は友達の家に泊まらせてもらっているので大丈夫です。もう少し時間を下さい。落ち着いたらまたこちらから連絡します 真琴】

それだけ書いて送信した。

彼からすぐに返信がある。

【わかった。真琴を信じて待っているから。何か困ったことがあればすぐに連絡してほしい。俺は君のそばにいつもいるよ。澤井涼太】

彼の温かくて広い心に今は甘えさえてもらおう。

澤井さん、勝手な私でごめんなさい。でも、あなたのことを信じてる。

スマホを胸に当て目をつむった。