ロビーに戻ると山川さんがソファーでコックリコックリと船を漕いでいた。

疲れたよね・・・・・・私の代わりに一晩中父に付き添ってくれたんだもの。

私は山川さんの隣にそっと座る。

山川さんは母の小学校からの同級生で長年の親友。

私が産まれた時からずっとそばにいて、母のことがあった時もずっと父と私を支えてくれた。

そんな山川さんは若い頃一度結婚をしたけど、うまくいかなくてわずか半年で離婚、それ以来ずっと一人でいる。

父とはよく口喧嘩するけれど、父が誰よりも信頼している存在であることはもう随分前から感じていた。

山川さんもそんな頑固な父をうまくかわしながら、いつも明るく私達の生活を見守ってくれている。

いつか私が落ち着いたら、誰にも遠慮せずに二人が寄り添える日がくればいいなと密かに思っていた。

「あら、真琴ちゃん戻ってたの?ごめんね、寝てたわ」

私に気づいた山川さんは目をしょぼしょぼさせながら苦笑した。

「お父さんとはちゃんと話せた?」

山川さんは目を細めて私の肩に手を置く。私は笑って頷いた。

「山川さんも疲れたでしょ、タクシー呼ぶから一緒に帰ろう」

「真琴ちゃんは実家に戻るの?」

「はい、戻ります。家のことも気になるし、入院時、父に必要なものも色々探さないといけないから」

「そう、わかったわ。彼氏さんはこのこと知ってるの?」

私は顔を少ししかめて首を横に振る。

「そう。まぁ、いいわ。じゃ、帰りましょうか」

山川さんは私の背中を軽く二回叩くと立ち上がった。