後は寝るだけって状態で、深夏の部屋に足を踏み入れる。



白×ピンクにレースやフリルたっぷりの、姫な部屋。



「可愛いーっ!!」



50年前からあるんじゃないかって位の文机に桐箪笥、挙げ句に掛け軸まで吊されてる部屋で過ごしてる私は、こんな部屋に住んでみたいって思う。



「私は、もっとシンプルな部屋が良いんだけどね…。」



お母さんの趣味に辟易してるのか、深夏は愚痴をこぼした。



ホントは深夏の部屋をゆっくり見ていたかったけど、明日も学校があるから休むことにした。



部屋の電気が消えて間もなく、ふとリビングで喋ったことを思い出した。



深夏のお母さんにも、坂下はオジサンに見えるらしい。



「ねぇ、ミカ。」



「何?ワカ。」



「ミカも、坂下先生がオジサンだと思う?」



「そりゃあそうでしょ、40過ぎてるし。」



実際、もうすぐ44になる。



「そっか…、おやすみ。」



「うん、おやすみぃ。」



欠伸交じりの声で、深夏が答えた。



この日、私は眠れなかった。



坂下のあったかい腕や香水の匂い、『ワカ』って呼ぶ優しい声を思い出したら…。



胸の奥がきゅーんっとなって、頬がとても熱くなった。



早く、会いたいな…。