「ワカ、今から見たことは人に言わないでよ。」



深夏んちの可愛らしい洋館の前で、念押しされた。



深夏は私と同様に、家に友達を呼ばない。



純和風造りのウチの場合、しきたりとか煩そう…って友達が敬遠しちゃうから来ない。



事実、特にジイサンが煩いけど。



だけど、そんなコト言うなんて、深夏んちには何があるんだろう?



玄関を開けると、フリルとレースで溢れかえっていた。



玄関マットやスリッパ、下駄箱の上に飾られた小物に至るまで可愛い。



フリルのエプロンを着けた深夏のお母さんが、笑顔で出迎えてくれた。



フリルのついたドアノブを回してリビングに入ると、やっぱりフリルの世界。



「ミカんち、すごく可愛い!」



「ちょっと、ワカ!

これ以上、ママが調子に乗ったら困るって!!」



深夏んちを飾るフリルは、殆どお母さんの手作りらしい。



「若菜ちゃんって、想像してたよりもハンサムさんねぇ~。

王子系着せたいわ!!」



…はい?



何のことかさっぱり分からない私は、お母さんからフリルやレースのついた洋服専門の雑誌を見せてもらった。



要は、膨らませたスカートよりもパンツスタイルが似合うってことか?



「もう、ママやめてよ!

ゴシックとかロリータとか何だか知らないけど、私もワカもそういう趣味無いの!!

ってか、ワカも焼きそばの特訓するんでしょ?」



…はい、そうでした。



「ママの実家、食堂なの。

焼きそばが、人気No.1メニューなんだ。」



手芸だけじゃなく、料理もお手のものなんてスゴイなぁ…。



そう思いながら、深夏のお母さんを見た。