(キレイな人だな…)

紗綾の目は着物姿の彼女に釘づけだった。

お尻まであるストレートの黒い髪がサラサラと風に揺れている。

「そう言えば、この街に演劇集団がきているって言ってたな」

彼らに対し、エリックが思い出したと言うように呟いた。

「演劇集団ですか?」

彼の方を振り返って聞いた紗綾だったが、すぐに目をそらした。

(ち、近い…!)

思っていた以上に近かったエリックとの距離に驚いたからだ。

心臓がドキドキと早鐘を打っている。

「ああ、かなり有名な旅芸人一座らしい」

エリックは紗綾が慌てていることに気づいていない様子だった。

「…そ、そうなんですか」

そう返事をした自分の声は、不自然じゃなかっただろうか?