「買いたいものや見たいもの、ですか?」

そう聞き返した紗綾に、
「何か必要なものはないかって」

エリックは言った。

「必要なものですか…」

紗綾は考えたが、特にこれと言ったものは思い浮かばなかった。

「何もないか?」

そう聞いてきたエリックに、
「はい、特には…」

紗綾は返事をした。

「そっか…」

エリックはやれやれと言うように息を吐いた。

「じゃあ、少し俺につきあえ」

「えっ…ああ、はい」

少し考えてから言ったエリックに、紗綾は首を縦に振ってうなずいた。

彼と一緒に訪れたところは、洋服店だった。

(エリックさん、何か欲しい服でもあったのかな?)

吟味するように服を選んでいるエリックの後ろ姿を見ながら、紗綾は思った。