形の綺麗な唇はもうほぼ目の前。

あと5センチと迫っている。

内心、ひゃー!!と悲鳴をあげながら居ても立っても居られなくなった私はぎゅっと瞼を瞑った。


………アレ?何も起きない。

そっと瞼を開くと…横でソファーの肘掛に顔を埋めて肩を震わせる准一さんの姿が。

その瞬間、自分がいかに意識していたのかと思い知らされた。

ぶくくくく、と必死で笑いを堪えながら肩を震わせ続ける准一さん。

羞恥心マックスに達した私は理事長席から勝手にクッションを取ってきてそれを准一さん目掛けて投げつけた。



「酷い…からかうなんて」

「ごめんて…あまりに必死なマキの表情にツボって…」


未だ笑いが止まることなく手で口元を覆いながら話す准一さんはニヤニヤしっぱなし。

こっちは真っ赤で涙目。

その上どうしていいのかわからずその場につっ立っているというのに。



「そんな怒るなよー…。ほら、おいで」


さっきまでのご機嫌ナナメな表情は何処かへ消えていて、優しく微笑む。


こんなのに騙されちゃダメだとわかっているのに、イケメンの微笑みにきゅーんと胸を打たれてしまう私。

今、かわれたばっかりだというのにときめいてる…