その時、社長の手を取ろうとした私の手は、横からカッ攫われて。
「―吊戯、井上を借りる」
……まさかの。
「御門、こいつは引越しの準備が……」
「20分。いや、10分でいい。話がしたい」
なんてことだ。
ずっと、避けてきたのに。
「えっと……」
「セクハラか?」
「違うわ!」
戸惑う私に、突っ込む吊戯、そして、怒る有栖川さん。
「―わかりました」
逃げようと思ったけど、手の代わりに握られた腕……圧倒的に逃げられないくらいの力で、握られている。
逃がさない、そう言われているようだから。
「……お前が言うのなら」
吊戯は納得すると、
「10分な」
そう言って、私を有栖川さんに託した。