涙を流しながら、そういう私を見て、優しく微笑んだ女医さんと看護師さん。
「井上さん」
「っ……」
「どのような事情があるのか、私たちにはわかりません。けれど、いつでもあなたの味方です。ですから、頼ってくださいね」
「っっ、はいっ……」
「女医としてではなく、一人の人間として。あなたが産むと言ってくれたのは、私はとても嬉しいです」
女医さんに励まされて、私は医院を出た。
家に帰って、テレビをつける。
ぼんやりと画面を眺めながら、私は考えた。
―……もし、あの日に戻れたら。
私はあの日を後悔するだろうか。
(……ううん)
やっぱり、幸せだったと思うんだろう。
事故でもなんでも、好きな人とひとつになれたこと。
それを喜ばずに悲しむなんて……。
「ごめんね」
まだ、ぺっちゃんこのお腹。
優しく撫でて。
「お父さん、いないけど……君はお母さんだけで我慢してくれるかな?」
優しく、語りかける。
少しずつ、成長していこう。
この子と一緒に……少しずつ、少しずつ、前を向いて。
私は引き出しから、綺麗な紙を出す。
覚悟は決めた。
もう、大丈夫。
「……お母さんと、頑張ろうね」
私は優しく語りかけて、未来への不安を抱きながら、眠りについた。