あの後、御門は会社を辞めた。
理由は、お義父さんが引退したからだ。
そして、御門は家を継いだ。
会社での経験を生かし、私も出来ることは手伝い……。
気がつけば、15年。
「お父さん、どうしたの?」
今年、17歳になった夏姫がやって来る。
「玲於達は?」
「これから来ると思うわ」
夏姫の言葉通り、すぐに聞こえてくる元気な足音。
「俺、いっちばーん!」
「あー!玲於兄の意地悪ッ!」
元気よく駆け込んできた今年15歳の玲於と、7歳の蜜。
「玲於、蜜、廊下は走っちゃダメだよ」
窘めるように、静かに言いながら入ってきた夏陽は玲於と双子だから、15歳になる。
2卵生だったからか、2人は顔立ちも性格も違って。
「あれ、咲春は?」
御門の問いかけに、
「あ、あっちで一心不乱に和菓子作ってた」
と、夏陽が答えた。
「またかーったく、あいつは……」
ブツブツ言いながらも、嬉しそうな御門。
「やっぱり、嬉しい?御門」
私が傍によると、
「和菓子の魅力を分かっているから、夢中になれるんだろ?まだ、9歳の少女が」
と、御門が言った。
「そうね、あの子にはびっくりだわ」
咲春はわずか5歳で、誕生日プレゼントに和菓子の技術を要求してきた子だ。
食べるのも、作るのも好きらしく、時間があれば、厨房に籠ってる。