「奥様のお名前は?」
「…………夏咲」
躊躇った。
物凄く、躊躇った。
けど、もし、何かあれば……家に火を放ってでも、逃げ出すつもりだった。
「夏咲?夏咲って……あの秘書の夏咲ちゃん!?」
なんで、名前だけでそこまで推理が?
「吊戯さんが秘書がいなくなったとボヤいていたけど……何?貴方がさらったの!?ってか、夏姫ちゃんが生まれてるって……ええ!?」
ああ、忙しない。
「……また、連絡します」
適当に切上げて、仕事に行こう。
「………………再来月の日曜日に本家に来い」
すれ違いざま、父が呟く。
「……………………覚えていたら」
睨まれたけど、知ったことか。
ここまで来れば、よもや意地。
絶対に、夏咲と夏姫は守る。