幸せだ。
最愛の妻と、娘に見送られて向かう仕事は、何倍も頑張れる。
この日、俺は夏咲と入籍する。
夏咲はずっと俺の両親を気にしていたようだけど、俺にとっては夏咲が不可欠なんだ。
彼女を失わないためなら、どんなものでも俺は捨てられる。
恐らく、この命でさえも。
「……御門?」
漸く、本当の意味で夏咲を妻と呼べると喜んでしまったからか、俺は気を抜いていた。
まさか、いるなんて。
「はい、受理致しました。おめでとうございます」
入籍が受理された瞬間、声をかけられた。
振り返ると、そこに居たのは両親。
「なっ……」
「お前っ、この1年どこで……」
もう、放っておいてくれ。
夏咲と夏姫から離れるくらいなら、俺は死ぬ。
「言っただろ。吊戯からも聞いてるはずだ。俺は結婚する……いや、今した」
「勝手にっ……!」
「うるせぇ!俺がどうしようが、俺の勝手だ!俺が誰と生涯を共にしようが、文句は言わせねぇ!!文句言うのなら、俺は有栖川の籍から抜ける!」
「バカ言うな!お前は……っ」
「あなた」
母親が、父親をとめた。
そうだ、ここは役所。
騒いでいい場所ではないんだ。
「別のところに、移動しましょう?」
久しぶりにしくじったと、俺は深いため息をついた。