「夏咲ー!」
午前11時頃。
私は親友の唯華(ユイカ)と、買い物に行くことにした。
ずっと、家にいても息が詰まるからね。
欲しいものもあるし……。
「あ、この子が夏姫ちゃん?フフッ、小さいなー」
唯華は大きなお腹を抱え、微笑む。
「唯華ももうすぐじゃない」
「そうなの。もう、蒼綺(ソウキ)が心配しすぎて……」
「蒼綺くん、良いお父さんになるね」
桐島蒼綺。
大人気声優兼歌手であり、まぁ、芸能人。
彼の一家が芸能一家で、御門とも付き合いがあると聞いた。
「唯華!」
そして、そんな彼は私の親友に夢中である。
「あまり動き回るな」
「フフッ、大丈夫よ〜」
「そんなこと言って、前、倒れただろが」
「貧血で、でしょ?蒼綺の特製貧血防止の料理を食べたから、大丈夫!」
前、写真を見せてもらったけど、坊ちゃんにしてはすごい料理の腕前の蒼綺くん。
「朝ごはんさ、ほうれん草スープとトーストとグレープフルーツジュースと……ね?健康的でしょう?」
唯華の笑顔は幸せに満ちていて、親友の笑顔が嬉しくてたまらない。
「夏咲は?」
「え?」
「夏咲は幸せ?」
唯華も、孤児だった。
だから、私と同じ施設出だ。
私は夏姫を抱き締めて。
「うん、幸せ」
と、微笑んだ。