「……お、帰ってきた」


社長室に戻ると、吊戯は椅子に座って仕事していた。


「何だ、くっつくのか」


「吊戯、相手が御門だって気づいてたの!?」


個人的に、そっちの方がびっくりだわ。


「いや……あんな攫い方をされたらなぁ……」


「ってか、私達のこと、置いて帰ったよね!?」


「俺、10分は待った。けど、30分待っても帰ってこねぇから。いっかって。……御門いるし」


そうなのだ。


吊戯は私を託したあそこから、先に車で帰ってた。


終電が終わっている時間帯の今、車でしか帰れないのに!


「御門が車だったから、良かったんだよ?」


「電話したら、迎えに行くぐらいはしたよ」


面白そうに笑うこいつは、本当に手に負えなくて。


「にしても、御門といることを選ぶのか」


「え、あ……うん」


なんか、報告って恥ずかしいな。


「またなんで?」


「へ?」


「お前、1人で育てていく覚悟だったんじゃねぇの?」


そりゃ、そうなりますがな。


誓った数日後には、こんなことになってんだから。


「ってか、聞いたよ!吊戯、御門が私の事好きってことを知ってたんだって!?」


「おう」


「おうって……私が御門のことが好きなこと、吊戯知ってたじゃない!」


「こういうのは第三者が介入すべきじゃない」


……正論すぎて、腹が立つ。